はじめに
この度のコロナウイルスの蔓延により、いわゆる「コロナ休校」が、長いところでは、3月始めから5月終わりまでの、3か月もの間続きました。
そして、6月から、やっとほとんどの学校で分散登校や普段通りの授業が再開されました。
私の住んでいる地域でも、久しぶりに小中学生が元気に登下校する様子が見られるようになり、うれしく思っています。
しかし、「3ヶ月も休校したのに、学習の遅れを取り戻せるの?」という疑問をもたれる保護者の方も多いでしょう。
そこで、学習の遅れを取り戻すための学校の取り組みや、家庭学習ですべきことを、元教師である私が、分かりやすく解説します。
この記事を読んで欲しい人
- 小・中学生のお子さんの保護者の方
- 学校の先生
- その他教育関係者の方
この記事を読むと分かること
- 文部科学省の発表した「『学びの保障』総合対策パッケージ」の内容
- コロナ休校中の学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策/加配教員・学習指導員
- コロナ休校中の学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策/授業時間を増やす
「『学びの保障』総合対策パッケージ」について
6月5日に文部科学省から、「『学びの保障』総合対策パッケージ」という施策が発表されました。
要約すると、
- 新型コロナウイルス蔓延によるおよそ3か月間にわたる小・中・高等学校等の休校期間中の、児童・生徒の学習の遅れを取り戻す。
- 今後再び休校になっても、学びを止めない。
- そのための様々な施策を施す。
ということが書かれています。
学習の遅れを取り戻すための、学校(文部科学省・地方自治体)の施策①
加配教員や学習指導員の数についての、文部科学大臣の返答
6月5日の萩生田文部科学省大臣の記者会見で、「第2次補正予算案に組み込まれた、『加配教員3,100人』という数字は少ないのではないか。」という記者の質問に対して、回答しました。内容については、こちらをご覧ください。
文部科学省ホームページより、萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年6月5日)
各予算に組み込まれた加配教員等の数と確保できた数
会見の内容や、文部科学省が発表した他の資料を基に、平成2年度の予算に組み込まれた加配教員の数の表(表1)、平成2年度の予算に組み込まれた学習指導員等の数と、実際に確保できている人材の数(6月5日時点)の比較の表(表2)を、作ってみました。
表2から、当初予算、第1次補正予算、第2次補正予算を合わせて、合計158,300人分の予算が付いているにもかかわらず、実際には、6月5日時点で、72,000人の人材しか集まっていないことが分かります。
その中で、当初予算分として、学習指導員やスクール・サポート・スタッフ等として、56,500人分の予算に対して、すでに計45,000人確保できていることが分かります。
しかし、上の表の黄色でマークしてある部分に、
「スクールカウンセラー27,500人、スクールソーシャルワーカー10,000人」
とあり、当初予算で確保できた45,000人のうち、その多くをこの2つの職種が占めていることも考えられます。
スクールカウンセラーも、スクールソーシャルワーカーも、授業の様子を見ることはあっても、子どもを指導したり、教師の助手のようなことをしたりはしません。
また、「スクールサポートスタッフ」というのは、プリントの印刷などの事務的な仕事が主ですので、学級の補助に入ることはないと思います。
そして、それぞれの職種の不足分の合計は、6月5日時点で、何と83,600人にもなります。
この対策として、教育委員会の人材確保を後押しするため、文科省が、4月に「学校・子供応援サポーター人材バンク」を設置し、退職教員、大学院生、大学生などに呼び掛けている他、教職課程に在籍する教育実習生の実習の代替として学習指導員の活動を行わせる方針だということです。
予算通りの人員が確保できた場合の各校に配置される割合
仮に、呼びかけにより、加配教員や学習指導員等の人材が、予定数確保できたとして、小・中学校にどれぐらいの割合で配置されるのか、計算してみました。
加配教員
令和元年度の文部科学省の統計によると、全国の小学校の学級数は、27万3648(私立を含む・特別支援学校等を除く)、中学校の学級数は、11万8215(同)だそうです。
つまり、全国の小・中学校の学級数は合わせておよそ39万です(私立を含む・特別支援学校等を除く)。
この学級数に対して、加配教員が3100人ということは、およそ126学級につき、一人の加配教員がつくということです。
126学級といえば、小・中学校の1校あたりの学級数が約15学級とすると、8校になります。
加配教員が、小・中学校合わせて8校あたりにつき、たったの一人です!
文科省によると、
小6と、中3で、感染症対策として、少人数に分けて授業を行う場合の加配教員
だそうです。
学習指導員
第1次補正予算と第2次補正予算を合わせると、学習指導員は、81,200人です。
令和元年度の文部科学省の統計によると、全国の小中学校の数を合わせると、28,492校(私立を除く)です。
つまり、1校当たり2.8人の学習指導員が入る計算になります。
この人数では、1学級あたり一人はもちろん、小学校では、1学年あたり一人も難しいです。
文科省によると、
学級を2つに分けるなど分散登校等を行う場合は、地域の感染状況に応じて、学習指導員を各校2~3名程度追加配置し、学級担任の補助などを通じてきめ細やかな指導を実施
ということです。
それ以外の場合でも、
地域の感染状況に応じて、学習指導員を各校1~2名程度配置し、学級担任の補助などを通じてきめ細やかな指導を実施
することになっているのみです。
国全体の学習保障に必要な人的支援に関して、下に、文科省の資料を貼っておきましたので、ご覧ください。
学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策②
学習の遅れを取り戻すために、授業時間数を増やす
文科省によると、休校期間中の学習内容の遅れを取り戻すことができるよう、まず、「学校における指導を充実」させます。
具体的には、
登校日の設定、分散登校の実施、時間割編成の工夫、長期休業期間の見直し、土曜日の活用、学校行事の重点化や準備時間の縮減等
を行います。(下記参照)
まとめ
- 学習の遅れを取り戻すために、加配教員や学習指導員を配置する予定だが、確保できた人数は、少ないこと。
- 学習の遅れを取り戻すために、授業時間数を増やすこと
の2つが学校(文部科学省・地方自治体)がすることだと分かりましたね。
次回「コロナ休校中の学習の遅れを取り戻す方法②」では、それ以外の学校の施策や、家庭学習でするべきことをお伝えします。
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