はじめに
「コロナ休校中の学習の遅れを取り戻す方法①」に引き続き、コロナ休校による学習の遅れを取り戻すための学校の取り組みや、家庭学習ですべきことを、元教師である私が分かりやすく解説します。
この記事を読んでほしい人
- 小・中学生のお子さんの保護者の方
- 学校の先生
- その他教育関係者の方
この記事を読むと分かること
- コロナ休校中の学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策/学校の学習活動の重点化について
- コロナ休校中の学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策/地域や家庭の協力を得て、定着が不十分な児童生徒には、別途必要な措置を講ずることについて
- 教師の仕事が大幅に増えていることについて
- 家庭学習ですべきことについて
学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策③<学校の学習活動の重点化を行う>
学習内容の約2割分を授業外で学ぶ
下に掲載したのは、朝日新聞デジタルの6月6日の記事です。
「『学びの保障』総合対策パッケージ」の内容について書かれています。
この記事によると、
コロナ禍の長期休業による学習の遅れを取りもどすため、小中学校の教科書のうち、約2割分を授業外で学ぶことができる。
そして、
子どもの勉強をみる家庭の負担が増えることは避けられず、保護者や教員からは懸念の声が上がっている。
とあります。
この「約2割分を授業外で学ぶことができる。」とは、どのようなことなのか、順を追って説明します。
学校ならではの学びを最大限確保するためには、学習活動の重点化が必要
文部科学省が6月5日に発表した「『学びの保障』総合対策パッケージ」では、
特例的措置も活用した教育課程の見直しやICT環境整備などを含め、柔軟な対応が可能となるための準備を進め、一旦収束しても再度感染者が急激に増加するような場合であっても学校ならではの学びを最大限に確保
とあります。(下記参照)
「学校ならではの学び」とは、
教師と児童生徒の関わり合いや児童生徒同士の関わり合いが特に重要な学習への動機付けや協同学習、学校でしか実施できない実習等
のことです。(下記参照)
限られた授業時数の中で、「学校ならではの学び」を確保するために、学校の授業で行う学習内容を限定することを、「学習活動の重点化」という言葉で示しています。
学校の授業における「学習活動の重点化」に伴い、個人でも実施可能な学習活動の一部は、授業以外の場で行うことになる
そして、学校の授業における「学習活動の重点化」とセットで考えなければいけないのが、
個人でも実施可能な学習活動の一部をICT等も活用して授業以外の場において行う。
ということです。
どのような学習活動が授業以外の場において行う学習活動なのか、
「子供の学び応援サイト(臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト)」から「学校の先生へ」に入り、「学習活動の重点化等に資する年間指導計画参考資料(一般財団法人教科書協会)」のサイトで見ることができます。
6月5日現在は、小6,中3のみ掲載されています。
例えば、小6の国語、算数では、下記のようになっています。
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『学びの保障』総合対策パッケージの「学校の授業における学習活動の重点化」の項には、このように書かれています。
国語科において、学校における課題設定を踏まえ授業以外の場で意見文等を作成させる。
数学科において、学校における練習問題の取組を限定し、宿題の添削を充実させる。
理科において、学校における実験結果の分析・考察のまとめを授業以外の場で作成させる。
このように、国語で意見文を書いたり、算数の練習問題を解いたりすることは、授業以外の場で行うことになります。
これが、「約2割分を授業外の場で学ぶことができる」ということです。
私は33年間、小・中学校の教師として勤めましたので、能力が低い、意欲が低い、保護者が仕事で忙しい、家庭の協力が得られない等の理由で、これら2割の学習を家庭ですることができない子どもがたくさんいるであろうことは、断言できます。
学習の遅れを取り戻すための学校(文部科学省・地方自治体)の施策④<地域や家庭の協力を得て、定着が不十分な児童生徒には、別途必要な措置を講ずる>
「『学びの保障』総合対策パッケージ」の「学校の授業における学習活動の重点化」の項に、
定着が不十分な児童生徒には、別途個別に必要な措置を講じる
とあります。(下記参照)
また、「『学びの保障』総合対策パッケージ」の「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、年度当初に編成した教育課程を見直すことが必要な場合の基本的な考え方」には、
地域や家庭の協力も得て、学習効果を最大化できるよう、カリキュラム・マネジメントを行う。
とも書いてあります。(下記参照)
つまり、「定着が不十分な児童・生徒に別途個別に必要な措置を講ずる。」ことや、「地域や家庭の協力を得て学習効果を最大化する。」ことができることが前提で、コロナ休校中の学習の遅れを取り戻し、今後も「学びの保障」をする、と言っているのです。
教師の仕事が大幅に増えている
授業時間数の増大
「コロナ休校中の学習の遅れを取り戻す方法①」で書いたとおり、各学校に配置される加配教員や学習指導員の数は、もともとの予算も少ないのですが、その予算分の人数すら、全然確保できていない状況です。
それでも、「学びの保障」のために、「学校における指導の充実」を行わなくてはいけません。
それは、授業時間数を増やすことです。(上記の『学びの保障』総合対策パッケージ」の「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、年度当初に編成した教育課程を見直すことが必要な場合の基本的な考え方」参照)
ほとんどの学校ですでに対策がされています。
それだけでも教員の負担は大幅に増えています。
家庭学習の課題作り、ICTを活用した遠隔授業の準備
そしてさらに、「家庭での学習課題を作成」すること、「ICTを活用した遠隔授業の準備」などの仕事が増えます。
児童・生徒に別途個別に必要な措置を講ずること
家庭学習をさせて採点して終わり、ではなく、
定着が不十分な児童生徒には別途個別に必要な措置を講ずる
ことが必要です。授業時間内ではできませんので、休み時間や授業後に補習などをする必要があります。
新学習指導要領に対応した新しい指導内容や、評価方法の研究
小学校では今年度、中学校では来年度から、新学習指導要領が全面実施され、小学校でいうと、外国語科、道徳科、プログラミング学習の3つの指導内容が新たに加わり、それによって、授業時数も増え、教科書も新しくなりました。
また、「主体的・対話的で深い学び」などの新しい指導内容が加わり、成績の評価項目も変わり、タブレット学習が導入され始め、と教師たちも、新しく勉強しなければいけないことばかりです。
学習内容を減らしたり、新学習指導要領の趣旨を変えたりせずに、ほぼ全ての学習内容を履修させる
それなのに、「新学習指導要領の趣旨を踏まえて教育課程を編成する。」と、内容を減らしたり、趣旨を変えたりせずにほぼ全ての学習内容を履修させる(ただし、感染対策のために単元の順序を入れ替えたり、音楽や体育、理科などの一部を行わなかったりします。)旨が、「『学びの保障』総合対策パッケージ」の「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、年度当初に編成した教育課程を見直すことが必要な場合の基本的な考え方」に記載されています。
コロナウイルス感染対策のため、給食の配膳や掃除、配布物配り等をすべて教師が行ったり、下校後の消毒作業をしたりしている
今年度中に学習内容を終わらせるように、地方自治体の多くの教育委員会から、学校に指示が出ている
『学びの保障』総合対策パッケージでは、「次年度以降を見通した教育課程編成」を行ってもよいことになっています。(下記参照)
しかし、私の知り合いの地方自治体の学校の教師の多くは、教育委員会から「今年度中に学習内容を終わらせるように」と指示を出されています。
いつまた、休校になるか分からない状態ですし、来年度以降に学習内容を持ち越すとなると、いろいろと困難な問題が出てくるため、そのような指示が出ているのではないかと思われます。
家庭学習ですべきこと
保護者がお子さんに付きっきりで勉強をみる
このような状況ですので、残念ながら学校や教師に頼ってはいられません。
ほとんどの学校では、人的支援がほとんどないまま、それぞれの教師が、授業内容を短時間でこなそうと、必死に頑張っていることでしょう。
保護者の方は、非常時と割り切って、お子さんの勉強をしっかりみてあげてください。
子どもさんの学力によっては、付きっきりでみることになるかもしれません。
特に、学力不足ややる気不足のお子さんの場合は、この際、仕事を一旦やめてでも、お子さんを援助してあげてください。
計算問題や、漢字の反復練習は、ご家庭でも比較的指導しやすいので是非見てあげてください。
そして、今までは、宿題で出なかったことが、宿題に加わることでしょう。
例えば、授業に入る前の「自分の予想を書きましょう。」とか、授業が終わった後の、「自分の考えを書きましょう。」といった場面です。
これは、元教師の立場で言わせていただくと、書けない子は、全く書けなかったり、書いても、一言で終わったりしている場合が多く、それでは、全く学力がつきません。
やはり、保護者の方がその課題について質問をしたり、子どもさんの考えをまとめるための助言をしてあげる必要が出てきます。
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家庭教師や個別指導塾に入る
仕事が忙しくてできないのなら、家庭教師を付けたり、個別指導塾に入れることも考えてみてください。
感染を防ぐため、ICTを活用した遠隔授業での個別指導塾や家庭教師もありますので、1度お子さんに体験させてあげるといいと思います。
一斉授業を行う塾は、子ども一人一人の理解度やそれぞれの学校の進度に合わせた指導が難しいと思いますので、このような状況下では、避けた方が賢明です。
まとめ
以上のことから、教師がしなければいけないことが大幅に増えたのに、人的支援が足りず、「学びの保障」はできません。コロナ休校中の学習の遅れを取り戻せないどころか、落ちこぼれや学校嫌いがどんどん出てしまうのは、目に見えています。
ですから、何とかコロナウイルスが落ち着くまでの間にお子さんが落ちこぼれてしまわないように、保護者の方が支えてあげてください。
もちろん、政府には、10兆円の予備費を使うなり、第3次補正予算を組むなりして、教員や学習指導員の待遇を大幅に改善してもらいたいです。
そして、加配教員や学習指導員に応募する人を増やしてもらいたいです。
そもそも欲張りすぎの「『学びの保障』総合対策パッケージ」の内容を見直す、といった方法も考える必要があります。
そうしてもらえるように、是非、皆さんで、いろんな場で声をあげていきましょう。
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